ゆかこキッズデンタルクリニック (北九州市戸畑区／戸畑駅)
村岡 由佳子 院長の独自取材記事
一枝入口バス停から徒歩3分の場所にある「ゆかこキッズデンタルクリニック」は、小児歯科専門のクリニックだ。院長の村岡由佳子先生は、大学時代から小児歯科一筋。「1歳半の定期検診が“初めての歯医者”だと、実は遅いんです。0歳の頃から定期的に通い、虫歯や歯並びの乱れをしっかりと防いでいくことで、お子さんの将来的な健康な歯をつくっていけるのだと考えています」と語る院長は、明るく、非常に話しやすい雰囲気が特徴だ。自身も子を持つ母親として患者の親と悩みを共有し、親と子、どちらとのコミュニケーションも大切にしながら適切な診療へと柔軟につなげていく。そんな優しさと愛情あふれる院長に、診察時に心がけていること、一般歯科と小児歯科の違い、子どもの歯並びで気をつけたい点などについて話を聞いた。
幼い頃からの予防が、将来の健やかな口腔環境をつくる
先生が小児歯科の道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか？
父が歯科医師だったので、将来的に歯科に進もうと考えていました。実際に福岡歯科大学に進み、そこで勉強するうちに小児歯科に興味を持ったんです。幅広く治療するというよりも、一つのことを突き詰めるほうが自分に合っていると感じていたこともあり、小児歯科を専門にやろうと決めました。子どもの頃からお口の中をきれいにして、歯並びなどにも気をつけておく。その積み重ねがあれば、その子が大人になっても困ることは少なくなるだろうと考えたからです。卒業後は福岡歯科大学の大学病院や、小児歯科を専門としているクリニックなどで研鑽を積み、2017年に当院を開業しました。本当に小児歯科一筋なんですよ（笑）。
小児歯科と一般歯科の違いはどこにあるのでしょう？
基本的に小児歯科で対応できるのは、0歳の赤ちゃんから、永久歯がすべて生えそろう中学生くらいまでですね。まれに「乳歯はどうせ永久歯に生え替わるから、そんなに治療に力を入れなくてもいいのでは？」と思う方もおられるようなのですが、それは違います。生え替わりを考慮した治療を行うのが小児歯科。乳歯の状態によっては、永久歯にも影響が出てくるんです。なので親御さんには、一般歯科と小児歯科をしっかり使い分けてほしいと考えています。小さいお子さんが風邪をひいたら、内科ではなく小児科に行くのと同じようなものだと考えるとわかりやすいかもしれませんね。小児科・内科の先生たちも、それぞれの専門性がまったく違いますから。
年齢に応じた治療を行い、将来考えられる治療のリスクを下げるのが小児歯科の役目なのですね。
この年齢でこの虫歯の状態ならこの治療がいい、など、月齢を含めた年齢に応じた治療を行います。それに、お子さんによって生え替わりが始まる時期も異なりますね。4歳頃から始まる子もいれば、小学校低学年から始まる子などさまざま。「生え替わりが遅くて……」と心配して来院される方もおられます。奥歯まですべて永久歯に生え替わるとなると中学生くらいまでかかることもあるため、小児歯科の対応できる年齢がその辺りになるのです。そこまでは専門的な治療ができる小児歯科で、年齢に応じた治療を受けることをお勧めします。
親と子、それぞれに気を配り、柔軟に診療を組み立てる
先生が治療の際に心がけていることは何でしょうか？
お子さん、親御さん、両方の様子を見て、その時の状態に応じた治療を行うことが第一です。例えば親御さんが「今日治療してください！」とおっしゃっても、お子さんが嫌がっていると無理にしてもいけませんよね。もちろん虫歯がひどくて早急に治療しなければならないのだったら、お子さんにも状況をできるだけかみ砕いて説明し、できる限りの治療を行います。しかしフッ素や、磨き残しが起きやすい奥歯の溝を埋めて虫歯の防止を図るシーラントを塗布する場合は、その日必ずやらないといけないというものでもありません。無理に処置を進めてお子さんの心に傷をつけてしまうよりは、親御さんとも話し合って、計画を柔軟に変更することも非常に大切だと思っています。
こちらでは、スムーズに診療を進めるために「TSD法」を取り入れておられるとか。
TSDは「Tell Show Do」の略ですね。例えば「今日はこれを使って、シーラントを塗るんだよ」と、お子さんにこれから行う内容についてお話しし、実際に使う器具を見て、触ってもらうことで、診療や機器に対する恐怖心を取り除いていきます。大人になった方が歯科を苦手とする理由に「子どもの頃、わけもわからず治療されて」ということを聞きますが、そうならないよう「どんなふうに治療するか」をお子さんにもしっかりと説明するのです。年齢によって理解度は異なりますが、こちらが伝えようとすれば何かしら通じるものはありますから。こうすると親御さんも安心してくださるんです。やはり大事なのは、親御さんに安心してお子さんを預けていただけるようになること。お子さん、親御さん、それぞれとの信頼関係の構築が必要なんですよ。
先生にもお子さんがいらっしゃるそうですが、親御さんと共感することも多いのでは？
「自分で歯磨きをしたがるので、触らせてくれない」とかは本当に多いですよね。1〜2歳になってくると自我も芽生えてきますから、「自分でやる！」とさせてくれなくなります。うちの子にもありましたし、歯科衛生士をはじめとしたスタッフにもお子さんがいますから、そこここで「うちにもあった」という話は出ていると思います（笑）。仕上げ磨きについては、やはり低学年だと親御さんにしていただきたいところですね。奥歯などはまだうまく磨けず、そこから虫歯になることも。お子さんの成長に合わせ、親御さんがフォローしやすいようにアドバイスするのも大事だと心得ています。
食べ物や姿勢など、歯並びを乱す“癖”にも対処する
お子さんの歯並びについても、相談や矯正を行っているとか。
必要に応じてお子さん用の取り外し可能な矯正器具を使う場合もありますが、当院がまずお伝えしているのは、お子さんの癖についてです。うつぶせ寝、食べる時に頬づえをつく、舌の癖、指しゃぶり、爪噛み、食べ物など、さまざまな“癖”が歯並びに影響します。そのアドバイスも行っていきたいのですが、できれば1歳半の検診前、0歳の歯が生え始めた頃には来院してほしいのです。お口の環境を整えるのは、早ければ早いほど良いですから。3〜4ヵ月に1回ほどの定期検診もお勧めしています。そうして習慣づけをしていけば、小児歯科を卒業して一般歯科に行くようになっても、同じように定期検診に通い続け、歯を守る行動を自ら選んでくれるのではないかと思います。
歯の習い事にも近いような印象を受けます。
そう思ってもらえるとありがたいですね。勤務医として働いていた頃、そこに通っていたお子さんが成長して、スタッフとして働くようになったのを見たりしていたので、年月を経てもいい関係を続けられるような関わりを当院でも持てればと思っています。まだ開業して数年ですが、歯などの写真も撮っているので「3年前はこうでしたね」とお話しすることもありますよ。だから毎回の診察やメンテナンスも、結構時間がかかるんです。お子さんの様子でその日の治療の進み方が変わることもありますし、それをまた親御さんとすり合わせることも必要です。歯を触られることが苦手な子であれば、予約時間を長めに取ったりもします。
本当にお子さんと親御さんの気持ちをくみ取りながら治療されているのですね。
「お母さんはああ言ってたけど、どう？」と一人になったお子さんに聞くと、こっそり本音を言ってくれることもありますよ。でも、こういう小さな積み重ねがお子さんの歯を守ることにつながるのだと思います。できるだけ当院で対応できるように準備を重ね、矯正の勉強も続けていますが、その中でも特に難しい症例にあたる場合は信頼できる矯正歯科専門の先生などをご紹介しますので、安心してご相談ください。子どもの頃、できれば0歳からの予防が、お子さんの健やかな成長につながります。お子さんの歯で気になること、わからないことがあればぜひ小児歯科を頼ってください。一緒にお子さんの成長をサポートしていきましょう。
