青空レディースクリニック (八王子市／八王子駅)
金子 透子 院長の独自取材記事
JR中央線八王子駅北口から徒歩で約2分のビル5階にある「青空レディースクリニック」。院内には色とりどりの花々や草木、青空の壁画が描かれ、心なごむ空間だ。劇団に所属し演劇活動も行っている金子透子院長が、リラックスして過ごせる場所にすべく、舞台演出も手がける心理カウンセラーとともに手がけたという。「“自ら健康になっていこう”をコンセプトに、現代を生きる女性の心と体の健康をサポートすることをめざしています」と、金子院長は優しい笑顔で話す。西洋医学に限らず、東洋医学やホリスティックケアなど、多角的な視点から状態の改善とさらに健やかな生活へと導く金子院長に、同院の診療ポリシーや近年の診療で気になることなどを聞いた。
女性医師による2診体制を基本に、広くニーズに応える
まずはご経歴とクリニックの成り立ちを簡単に教えてください。
千葉大学医学部を卒業後、松戸市立病院で産婦人科の医師として勤務していました。婦人科一般診療や妊婦健診やお産に加えて不妊治療、周産期医療、子宮筋腫やがん患者さんの診療など幅広く対応していたのですが、経験を重ねるうちに、単に薬の処方や手術で病気を治療するのではなく、普段の食事や運動、心の持ち方など毎日の生活を見直し、改善していくことでも患者さんに元気になってもらえるような医療を施せるのではないかと思うようになったのです。私一人の力で実現させることは難しかったのですが、学生時代からの仲間である心理カウンセラーの先生や鍼灸の先生、ヨガの先生などいろいろな方の協力を得て、2011年5月に開業できました。八王子駅前のこの場所に決めたのは、ビルの5階フロア全部が空いていたから。駅から近く、これだけの広さがあれば、診療以外のヨガのスタジオなども併設できると思い、この場所に決めました。
現在の診療体制はどのような形ですか。
ありがたいことに多くの患者さんに来院いただいていることから、2023年春からは医師を増員し、火曜日を除き原則的に医師2人による2診体制としています。女性医師のみで、それぞれ専門性を生かすというよりは広く産婦人科一般に対応。基本的に担当制をとらず、複数の医師が多視点から診察しています。以前は、初診の方は予約なしで来院していただき先着順で診療させていただいていたのですがお待たせしてしまうことが多く、現在は完全予約制とさせていただいています。当日の0時よりウェブ受付する形ですが、すぐに枠が埋まってしまって予約が取りづらいとのお声もいただいており、心苦しく思っています。
直近の診察を通してお気づきの点などありますか。
2点あります。一つはコロナ禍の在宅勤務などで外に出る機会が減って、太陽の光を浴びず体を動かさない生活が続き体調を崩される方が多い点で、もう一つは20代などの若い女性でも脂肪肝や糖尿病といった生活習慣病が増えている点です。10代で月経痛を訴えて来院される方も増えており、話を聞くと運動をほとんどしていなかったり、甘いものをたくさん食べている方が多い印象があります。いずれも生活習慣の乱れにより引き起こされており、改めて生活習慣を整えることの重要性を実感します。
見落としがちな生活習慣の大切さを、診療を通して啓発
生活習慣の体への影響は大きいものなのですね。
「生活習慣」は耳慣れた言葉ですが、その重要性を見逃されている方も多く、根本にある毎日の生活を振り返らずにサプリメントや薬に頼るという方が少なくないのです。しかし、当たり前の生活を見直すことは本当に大切なこと。食の西洋化が進む以前の日本人の食生活や、適度な運動を心がけるだけで、長く続いていた症状の改善が図れることもあります。私自身もいわゆる更年期世代で、以前、夏に突然眠れないほどの肩の痛みに悩まされました。冷房の効きすぎた部屋で長く過ごしていたためか、畑の草むしりを機にひどい痛みが出たのです。大変つらかったですが、毎晩湯船に浸かり体を温めることや、1日3食ご飯と味噌汁を中心にタンパク質と野菜、海藻類、きのこ類などをバランスよく食べ、甘いものを控えることを心がけると、いつの間にか気にならなくなりました。いつも患者さんに話していたことですが、改めて実践すれば良い方向に向かうと感じた出来事です。
健康生活へのヒントを伝える講座も開催していらっしゃるとか。
はい。自律神経・免疫系・内分泌系の３つの働きを調整して、本来からだが持っている健康力を発揮させる方法をまとめた「青空（そら）メソッド」を提唱しています。呼吸法や体操、マインドフルネスなどの実践により、心身の不調にアプローチするセルフケア術です。このメソッドをまとめた本があり、診療時に必要な部分を抜粋してお伝えするほか、月1回土曜に無料セミナーを開催しています。もっと詳しく学んで実践を続けたいという方は、併設の「スタジオ青空」にて定期的に開催されている行動療法プログラムにご参加いただくこともできます。私はヨガインストラクターの資格を持っており、開院前はインストラクターとして2年ほど活動したことも。「スタジオ青空」では、当時からの私のヨガの先生らによるスタジオプログラムを受けていただけます。
診療の際に心がけていることは何ですか。
しっかりとお話を聞くこと、そしてわかりやすくお話しすることを心がけています。これは私たちドクターに限らず、患者さんに関わるスタッフ全員で大切に共有していることです。骨盤底筋を鍛える体操やピルの飲み方、次回受診の方法など、詳しい情報提供は医師からではなく看護師や受付スタッフらから行う機会も多いものです。それぞれの立場から患者さんに接して、何か感じる部分があればすみやかに共有、対応するようにしています。全員が女性のチームだからこそ、親身になって関わることができているとも感じています。
「自ら健康に」をテーマに女性の転機に寄り添う診療を
産婦人科医師を志されたきっかけは？
何らかの形で人と接する仕事がしたいと思っていました。母は看護師の資格を持っていて、私が物心ついた時には養護教諭をしていたのですが、「病気になったら薬に頼るのではなく、治すのはあなたの体なのよ」というのが口癖でした。サラリーマンの父も、玄米菜食やヨガなどいろいろ独学しながら試しており、そんな家庭環境から自然と医師をめざすようになりました。産婦人科の医師を志したのは、研修でお産の現場に立ち会い、生命の誕生の素晴らしさにふれたことから。女性にとって人生の大きな転機である妊娠から出産、そして2人目の出産……と、患者さんと長い期間向き合うことができる点にも惹かれました。病院勤務時代は緊急手術などもありハードな毎日でしたが、やりがいもありました。これからも、女性が元気に輝くためのお手伝いをしていきたいと思います。
休日の気分転換に楽しんでいらっしゃることは？
医療関係者を中心に立ち上げられ、来年には30周年を迎える劇団での活動をライフワークとしています。それぞれ本業が多忙となり、一時期公演活動を行っていないこともあったのですが、創立25周年記念として誰もが迎える「死」をテーマとした公演をスタート。おかげさまで好評を博し、2024年２月には第４部を上演させていただくことができました。2024年10月にも再演が決まっています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
食事を摂れない状況が続き、しばらくおいてから食べると素材の味が際立つという経験はありませんか。以前開催していた「プチ断食講座」でも、そうした感想を多くいただきました。今後は、アドバイスの提供にとどまらず、健康生活を実際に体験していただけるような機会もつくっていきたいと考えています。更年期を中心に、婦人科トラブルは心理面との関わりが深いものです。当院には心理カウンセラーも在勤しており、問題を客観視し、心の持ち方によってよりよい方向へと導くお手伝いもしています。月経の異常や痛み、おりものが気になるといった症状から更年期に伴う心身不調まで、少しでも気がかりがあればぜひお気軽にご相談ください。
