きやまクリニック (鹿児島市／谷山駅)
木山 貴陽 院長の独自取材記事
JR指宿枕崎線・谷山駅から徒歩2分、鹿児島市電1系統・谷山駅から徒歩7分と、アクセスの便利な立地にある「きやまクリニック」。離島などへき地での医療に従事し研鑽を積んだ木山貴陽院長が、長年この地域の医療を支えてきた浜田クリニックの院長勇退に伴い継承し、新規開業した。シンプルながらも清潔感のある明るい雰囲気の院内だ。開業以来若い世代も増え、幅広い年齢層の患者に対応する。さらに訪問診療にも積極的に取り組む。診察の際はコミュニケーションを大切にし、患者に寄り添った診療を心がけるという木山院長に、離島の診療所でのエピソードや、得意な診療や医師としての思いを聞いた。
へき地医療の経験から総合的医療で地域医療をサポート
先生は、三島村と十島村の診療所で診察をされていたと伺いました。
私が卒業した自治医科大学は、地域医療を支える目的で全国の都道府県が共同して設立した大学です。毎年、各都道府県から2、3人ずつの学生が入学し、卒業後は出身県に戻り地域医療に従事することになっています。そのため、大学では何か一つに突出したスペシャリストを育てるというよりも、総合的な医療を提供するための指導をしています。三島村と十島村の診療所で勤務をしていた当時は、三島村担当が1人、十島村の北側4島担当が1人、残りを1人で担当していました。それぞれの島での診療日は決まっているため、診療日以外で何かあれば漁船で駆けつけたり、遠隔診療のようにモニターで症状を確認するなどして、その島の診療所の看護師さんに指示を出して対応したりしていました。
へき地医療を経験したことで、地域医療に対する思いがさらに深まったそうですね。
大学時代も地域医療にふれる機会は多かったのですが、自分が実際に携わるようになってへき地医療、地域医療の良さがわかりました。患者さんとの距離が近く、一住民としてその場所で過ごし、周りに溶け込みながらもドクターとしてしっかりと責任を持って診療をする仕事です。一度、別の島への診察に行くためにフェリーに乗り込んですぐに、胸痛を訴えている方がいると看護師さんから連絡があったことがあります。心電図を取ってもらい確認すると心筋梗塞でした。すぐにドクターヘリを要請し、搬送をすることになりました。一人で診療をすることが多いので最初は不安ばかりでしたが、実際にやってみると地域医療の魅力をすごく感じますし、やって良かったなと思っています。
へき地医療に従事していた時から開業の思いはあったのでしょうか。
地域医療の魅力を感じながらも、やはり専門性を持つスペシャリストへの憧れもありました。外科の修練が積めるような大きな病院に移ろうかとも考えました。専門に特化し、ある特定の病気を突き詰めて治すことも大事だと思いますので。ですが、それ以上に患者さんとのふれあいが好きになったんです。「最近の体調はどうですか」などと話しながら、その方が健康に長生きできるようにサポートする。そういった診療に、より魅力を感じるようになっていました。そんな時に継承のお話をいただき、開業しようと決心しました。へき地医療での経験を生かして、内科から外科、生活習慣病など幅広い診療内容で総合的な診断を行っています。訪問診療にも注力していますよ。
充実した検査体制で早期発見・早期治療につなげたい
診療の際、先生が心がけていることを教えてください。
私がというより当クリニックとして、患者さんとのコミュニケーションを大切にしています。看護師や事務スタッフも、私が言わなくても自ら実践してくれて頼りになります。初診の患者さんに対して、看護師がまず問診を行いますが、私が聞くことはほとんどないのではないかと思うくらいに細かくしっかり聞いてくれます。患者さんの気持ちに寄り添いながら、丁寧に話をお聞きする、そういった姿勢は当院の特徴であり強みであると思います。体の不調は心の不調からくることもあり、誰かと話すだけですっきり元気になることもありますよね。世間話の中に病気のヒントが隠れていることもあります。今後も「患者さんの話をしっかり聞き、コミュニケーションを大切にする」ことをスタッフみんなで心がけていきたいと思います。
開業時にクリニックをリニューアルされ、さまざまな検査が行えるそうですね。
各種血液検査、エックス線検査、腹部、頸部、甲状腺などのエコー検査、胃と食道、十二指腸を診る上部消化管内視鏡検査、大腸を診る下部消化管内視鏡検査などが行えます。当クリニックの上部消化管内視鏡検査は、画像が鮮明で処置も同時に行えるように経口で行います。同時にピロリ菌検査も可能です。内視鏡検査は痛みから躊躇する方も多いと思いますが、当クリニックでは鎮静剤を使い、苦痛が少なくなるような方法を取っています。検査後はリカバリールームでゆっくり休んでもらうので、その点も安心だと思います。その他、尿検査、ヘモグロビンA1cの検査も当日に結果がわかる機器を導入していますので、結果が出るまでの不安な時間も短く済むのではないでしょうか。また、睡眠時無呼吸症候群の検査も行えます。
内視鏡検査を行うことでどんなメリットがありますか？
日本人の死因のトップはがんです。内視鏡検査を行うことで、胃がんや大腸がんの早期発見につながり、早期治療に結びつけることができると思います。皆さん生活の中でさまざまなストレスを抱えていると想像しますが、胃や腸はストレスに弱く、潰瘍ができやすい臓器です。胃に症状が現れて来院し、すぐに検査ができれば患者さんにとって安心だと思います。下部消化管内視鏡検査でポリープが見つかった場合は、がんになる前の段階で処置することができ、メリットが大きいです。検査は時間がかかると思われるかもしれませんが、上部消化管の場合は観察だけなら10分くらい、下部消化管の場合は30分くらいで終わります。前処置と検査後のリカバリーを含めても半日あれば十分でしょう。
訪問診療を活用し必要な人たちへ医療を届けたい
訪問診療にも注力されているんですね。
へき地医療に携わっていたので、その頃から訪問診療に注力しています。地域に根差したクリニックをつくりたい、高齢になって通院が難しい人たちにも医療を届けたいと考えた時、訪問診療は必ず必要となるだろうと考え、開業と同時に始めました。現在は仲間が増え、医師3人と看護師のチームで行っています。訪問診療は患者さんのお宅にお邪魔するので、クリニックに来院して診察を受けるのとは、患者さんの表情もまったく違うんですよ。病気のことだけでなく日常のお話を聞いたり、時には一緒にお誕生日を祝ったりと、患者さんとの距離がとても近いんです。「先生、待ってたよ」と迎えてくださる方も多く、やりがいも感じます。クリニックで椅子に座って待っているだけでなく、必要な患者さんの所へ自分のほうから行きたいと思いますね。
在宅で患者さんを診る際は、ご家族のケアも重要かと思います。
基本的に在宅療養というのは、自宅で誰か介護してくださる人がいなければできません。私たちが訪問診療に行って診療するだけでは、在宅介護はできません。だからこそ介護者のケアも大事なんです。ですから患者さんのお宅へ訪問した時には、ご家族への言葉がけも忘れないようにしています。ご家族が疲れているなと感じた時は、レスパイト入院やショートステイなどの情報を伝え、介護者も疲れず患者さんも気を使いすぎないような制度の提案をしています。私たち医師は双方の気持ちに寄り添いながら診療を進めるようにしています。家で過ごしたい患者さんの気持ちを大切にしながら、ご家族に対しては負担を減らせるように手助けしたいですね。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
今後の展望についてはいろいろと考えていますが、今はまだ野望の段階なので、いつか実現できるように頑張りたいですね。へき地医療に長く従事した経験から、どんな病気も診るという総合的な診療が当院の特徴だと思います。問診、診察、検査から総合的に判断し、私ができることは行い、専門的な治療が必要な場合は適宜病院に紹介できるように連携しています。ですから何か気になる症状がある場合やどの科に行けば良いのかわからない時も、まずは気軽に来院してもらえればと思います。体調が悪い時の入り口として「きやまクリニックに相談してみよう」と皆さんに思ってもらえるようなクリニックでありたいと思います。
