近年導入するクリニックが増えている、歯科衛生士の「患者担当制」。「興味はあるけれど、大変そう」「よく聞くけど、働きやすいのかわからない」と、感じている人も少なくないようです。 本記事では「患者担当制」のクリニックで働くことに興味を持つ人に向け、そのメリット・デメリットについて解説します。ぜひ自分に合った職場を見つけるためのヒントにしてみてください。
<目次>
1 歯科衛生士の「患者担当制」とは?
歯科衛生士の「患者担当制」とは、一人の患者を特定の歯科衛生士が担当することをいいます。
歯科衛生士が大きな役割を担うクリーニングなど基本のケアをはじめ、虫歯治療やインプラント治療といった歯科医師の行う治療全般にも関わりながら、治療後もメンテナンスを通じて患者の口腔の健康を支えていきます。患者と歯科衛生士が二人三脚で治療や予防に取り組むイメージです。
一方、担当制を導入していないクリニックでは、自分の出勤日に受診した患者を担当することになるので、同じ人を次回も担当するとは限りません。しかし、その分多くの患者と関わる機会があります。 どちらがいいということではありませんが、「患者担当制」か否かで歯科衛生士としての働き方にも違いが出てきます。早速、メリット・デメリットを見ていきましょう。
2 歯科衛生士の「患者担当制」のメリット
●一通りの診療を担当することで、経験値を高められる
初診からメンテナンスまでの一通りの診療を担当するので、歯科衛生士としての経験値を高めることができます。 SRPやPMTC、歯磨き指導といった歯科衛生士ならではの業務はもちろん、口腔外科処置や補綴治療といった歯科医師の行う診療のサポートも行います。こうしたさまざまな経験を積むことで、業務の幅も広がるでしょう。
●継続的に患者を担当することで、スキルアップを図りやすい
患者を継続して担当していると、自分の行った処置の結果がわかるので、歯科衛生士としての成長につながります。もし良い結果が出れば、自信やモチベーションになりますし、思うような結果が出なかったとしても、その原因を見つけられれば、問題解決に向けた別のアプローチができるはず。 そうやって試行錯誤することにより、スキルアップを図れるのです。成果が目に見える分、当然責任も増えますが、頑張ったら頑張った分だけ自分の成長を実感できるでしょう。
●患者の生活の変化に気づきやすく、適切なサポートが可能
定期的に患者とコミュニケーションを図ることで、生活の変化に気づきやすいため、それを踏まえた適切なサポートができます。患者の状況が把握できていると、一人ひとりに合ったケアやアドバイスがしやすくなります。
■患者担当制で働く歯科衛生士の声
転職して仕事が忙しくなった人に、「1回10分以上磨いてフロスも使ってください」と指導しても、実践できずに放置されてしまうかもしれません。それよりも、歯磨きのタイミングや食生活を工夫してもらうほうが効果的なことも。だからこそ、患者さんの「変化」に目を向けて、今の生活でできることを考えるようにしていますね。
●コミュニケーション能力が鍛えられる
生活の変化に基づいた適切なケアやアドバイスをするには、情報を引き出す力やわかりやすく伝える技術が欠かせません。そのため、メンテナンスを通じて患者と定期的に関わる「患者担当制」であれば、おのずとコミュニケーション能力が鍛えられるはずです。
●患者と定期的に関わることで、信頼関係を築きやすい
日頃から患者と意思疎通が図れていると、信頼関係を築きやすくなります。「この歯科衛生士さんになら相談できる」「あのスタッフがいるから通い続けられる」と思ってもらえたら、信頼関係を築けている証拠。そうした安心感を与えられると、患者のデンタルIQ(口腔の健康に対する意識)も高まるので、メンテナンスがしやすくなるとともに、仕事のやりがいも感じられるでしょう。
3 歯科衛生士の「患者担当制」のデメリット
スキルアップややりがいなどメリットの多い「患者担当制」ですが、メリットとデメリットには紙一重な部分もあります。
●入職時にある程度のスキルを求められる
初診からメンテナンスまでのあらゆる工程に関わるため、入職時にはある程度の知識・経験を求められることが多いです。しかし、それは「専属として患者を任せられる」という周囲の期待の裏返しでもあるので、人によってはデメリットとは言いきれないでしょう。 クリニックによっては、研修や勉強会などで学んでから担当を持たせるケースもあることから、チャレンジしたいと思ったら求人情報や面接で教育体制について確認してみてください。
●コミュニケーションに不安があるとストレスに
「患者担当制」では、「コミュニケーションを取りやすい」という環境が整っているだけに、それなりの対人能力が求められます。それゆえコミュニケーションに不安があったり、患者との相性が合わなかったりした場合はストレスになってしまう可能性もゼロではありません。
●シフト変更が難しく、急な休みが取りづらい
勤務体制については、患者の予約に合わせてある程度固定されたシフトを組むことが多くなるので、プライベートなどでの急な休みが取りづらいという一面も。そのため、子育てや介護など家庭の事情で休むことが多い人は注意が必要です。
●複数の目でチェックできないため、視野が狭くなる
一人の歯科衛生士が一貫して患者を担当するため、口腔内をチェックする際にポイントが偏ってしまうことがあります。複数のスタッフでチェックするほうが、見落としが減ったり、他人の処置を見て新たな気づきや学びの機会になったりすると考え、あえて「患者担当制」にしていないクリニックもあるようです。
4 歯科衛生士の「患者担当制」は、どんな人に向いている?
ここまで「患者担当制」のメリット・デメリットを紹介してきましたが、実際のところ、どんな人が向いているのでしょうか。 下記のように、スキルアップややりがいを求める人は「患者担当制」に魅力を感じやすいため、お勧めです。
■「患者担当制」に向いている歯科衛生士のタイプ
・数年経験を積んだので、さらなるスキルアップを図りたい
・自分の仕事の成果を実感したい
・患者とじっくりコミュニケーションを取りながら、口腔管理をしたい
では、ある程度のスキルを求められる「患者担当制」は、経験の浅い人には向いていないのかというと、一概にそうともいえません。「先輩から一つ一つ丁寧に教わりたい」というスタンスなら、確かに「患者担当制」ではない職場のほうが合っているでしょう。
ですが、「経験値は高くないけれど、自分の力を試してみたい」「少しでも早くスキルアップしたい」という向上心の強い人であれば、思いきってチャレンジしてみるのも一つ。そういった意欲を買ってくれるクリニックも少なくありません。
向き・不向きという視点だけでなく、自分がこれからどんなキャリアを重ねていきたいかを踏まえ、それを実現するために「患者担当制」という仕組みをどう活用したらいいかを考えてみてはいかがでしょうか。
5 歯科衛生士の「患者担当制」を導入している職場を探すには?
「患者担当制を導入している歯科医院で働きたい」という場合は、求人サイトやホームページなどで「患者担当制」を導入しているかを確認しましょう。最近では、求人情報の中で「患者担当制」の魅力を積極的にアピールしたり、スタッフのコメントを紹介したりしているクリニックも増えています。
当サイト「ドクターズ・ファイル ジョブズ」でも、「患者担当制」を導入する歯科医院や病院の求人を探すことができるので、ぜひご活用ください。また興味はあるけれど自分に務まるのか不安な人であれば、「ドクターズ・ファイル ジョブズ」でクリニックの教育体制を調べたり、「働く先輩インタビュー」の記事を読んで実際に働く人の様子をチェックしたりするのもお勧めです。
自分に合うかどうか確認した上で応募することで、モチベーション高く、長く働ける職場と出会いやすくなるでしょう。
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ここまで、歯科衛生士の「担当制」について、そのメリット・デメリットを解説してきました。ぜひ本記事を、転職先を検討する際の参考にしながら、求人をチェックしてみてください(ドクターズ・ファイル編集部)。
■患者担当制で働く歯科衛生士の声
メンテナンス時に口腔内の状態が悪ければ、前回歯石の取り残しがなかったか、歯磨き指導に問題はなかったかという振り返りができます。自分の行ったことの「答え合わせ」をする意味でも、日々勉強になっていますね。